2004年12月9日 「パラリーガル通信」掲載
前回でパラリーガルの現状についてのレポートを終え、今回から「パラリーガル概論」の連載に入る予定でしたが、日弁連のパラリーガル認定制度について質問と意見が寄せられておりますので、今回はこれにお答えしましょう。
日弁連業務改革委員会の答申では「法学検定試験(日弁連法務研究財団)を利用した学力試験を実施すべきである」としか言っていません。3級の法学検定試験には一般コース、行政コース、司法コース、企業コースと4種類のコースがあり、それぞれ一部科目が違いますが、どのコースの試験を予定しているのか、という質問です。
今回の認定制度の目的が企業の法務部や公務員として働くパラリーガルではなく、弁護士のアシスタントとして働くパラリーガルの養成を目的としていることから当然司法コースの試験を予定しているものと思われます。また、答申は「実体法及び手続法」に関しての学力試験と言っていますが、手続法である民事訴訟法と刑事訴訟法の両方を試験科目にしているのは司法コースだけだからです。ちなみに、昨年度の3級司法コースの志願者は1,932名、受験者1,687名、合格者が43点以上で1,045名、合格率が61.9%となっています。
もう1つは、パラリーガル認定制度そのもの対する意見です。長いですので、要約させていただきます。
「パラリーガル認定制度を設けると認知度が上がりますので良いことだと思いますが、資格化するにはなじまない職種だと思います。現在勤務している事務所は企業の合併などを専門とするコーポレート部門と証券発行、証券化などを専門とするファイナンス部門にわかれています。特に後者は証券取引法を活用して、外国の政府や企業が日本で証券を発行する際に、日本の法律上必要な手続、当局への届け出等をしています。
パラリーガルもこれに対応して専門的な仕事をしています。高度に専門性を持ち、特殊な分野で仕事をしているため、刑事や民事の訴訟手続の書類は扱ったことはありません。登記簿や議事録などもなじみが薄いのです。パラリーガルとして認定されるためだけに、仕事に関係のない箇所を勉強することは意味がないと思います。金融部門はこれから伸びていく部門であり、弁護士だけですべてをやるというのは難しいのでパラリーガルの活躍が大きく期待されます。
リーガルリサーチは、経験がものを言うため、試験や資格でははかれません。現場の実情を把握せずに、上の方で話しあわれているので、ズレがあるような気がします。」
確かに、この方がおっしゃるように、今回のパラリーガルの能力認定が、このような大手の渉外事務所で専門的な仕事をしているパラリーガルをもその対象としているのであれば、この批判があてはまると思います。しかし、今回日弁連が養成し、認定しようとしているのは、弁護士数が1人ないし2人の小規模で広い分野を取り扱う事務所(小規模一般事務所)のパラリーガルを対象にしているのです。
日弁連も、一定の分野に精通した分野別パラリーガル(日弁連はこれを分野制・一級秘書と称しています)を養成する必要性を否定するものではないが、まずは小規模事務所におけるパラリーガルを養成し、その結果を踏まえて分野別パラリーガルの養成を検討すべきである、と言っています(このゼネラリストとしてのパラリーガルとスペシャリストとしてのパラリーガルの違いについては「第10回 現在のパラリーガル事情 (1)」で説明しました)。
ただ、日弁連が分野別パラリーガルとして破産分野や債務整理、交通事故処理分野のパラリーガルを養成することは可能であっても、この方のように高度な語学力を有し、証券発行や証券化などを専門とする金融のスペシャリストパラリーガルを養成し、認定することは現実的に不可能でしょう。
最後に付け加えておきますが、今回の日弁連の答申の内容も、パラリーガルの能力認定であって「資格」ではないということに注意して下さい。パラリーガルはその発祥の地であるアメリカにおいても能力の認定であって資格ではないのです。
次回からは、パラリーガルを目指す方々のために「パラリーガル概論」を連載いたします。これは、当社で行っている13科目の具体的な授業に入る前に、全体について大まかに知っていただく為にスタッフが作成したものです。メルマガとしての配信ですから、表や図さらには、もっと重要な書式等は送れませんが、重要なポイントだけはお伝えしていこうと思っています。
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