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パラリーガルコラム

知っておくべき!法律事務所特有の「言葉」

2017.04.07 written by ずんだ係長

みなさんこんにちは。ずんだ係長です。
前回は,私の一般企業での業務経験が,現在の法律事務所でどのように生かされているかについてお話ししました。今回は,法律事務所で使われる特有の「言葉」についてお話ししていきたいと思います。

まず,法律事務所で使われる言葉は,独特な言い回しであるものがあり,一般企業で使う言葉と大きく違う点は,その言葉一つ一つが厳密な意味を持つことにあります。
また,法律事務所で使われる言葉は,民事事件であるか,家事事件であるか,あるいは刑事事件であるかによっても異なってきますが,以下では,多くの法律事務所で取り扱われている民事事件の中で,貸金返還請求事件と,それに基づく債権差押命令申立事件の例を挙げて,法律事務所で使われる特有の言葉は「」でくくりながら,事件の流れに沿って見ていきたいと思います。

~貸金返還請求事件の例~

AさんがBさんに対してお金を貸していて,Bさんが返してくれない場合に,AさんがBさんに対してお金を返すように訴える場合,「貸金返還請求事件」を起こすことができます。Aさんは,「管轄」の裁判所に「訴状」等の書類一式を提出することになります。ここでいう管轄とは,裁判所間における事件分担の定めのことです。
さて,ここで訴えたAさんは「原告」,訴えられたBさんは「被告」と呼ばれます。被告に対して,原告から裁判所に出された訴状一式が「送達」されます。この送達とは,裁判所が正式に裁判所の関係者に対して,訴訟に関する書類を送付することを指しています。
訴訟書類を受け取った被告は,裁判所から指定された日までに,「答弁書」を出さなければなりません。答弁書を出さず,「第1回口頭弁論期日」にも欠席してしまうと,被告は原告の訴えを全て認めているとされて,訴状に書かれたことがそのまま裁判所に認められて,判決となってしまうからです。
被告が答弁書を出すと,その後の期日に向けて,原告も被告も「準備書面」で主張をしたり,「書証」によって証拠を出していったりすることになります。出す書証で何を「立証」したいかを説明するための,「証拠説明書」も一緒に出すことになります。裁判が進んでいって,原告と被告がお互いに歩み寄って話し合いで解決できる場合,和解することになりますが,裁判所が関与する「裁判上の和解」をすると,判決と同じ効力を持つ「和解調書」を裁判所が出してくれます。判決と同じ効力を持つということは,和解調書を作成したにもかかわらず,被告が原告に対してお金を支払わなかったりした場合,原告が,和解調書に基づいて「強制執行」の手続きを進めることができる,ということです。

原告が強制執行の手続きに進みたい場合には,今度は原告が「債権者」となり,被告が「債務者」,被告が持っている銀行口座等の金融機関(支店)が「第三債務者」となって,債権者であるAさんが,管轄の裁判所に「債権差押命令申立事件」を申し立てることになります。
ここで,元々の「貸金返還請求事件」で出された「判決」や,「和解調書」「債務名義」となります。債務名義をわかりやすくいうと,AさんがBさんに対して持っている債権の存在やその範囲を証明するための公的な文書ということです。Bさんが支払ってくれないので,Cにある口座を差し押さえる,という手続きになります。
債権者は,第三債務者に対して,「陳述催告の申立て」を同時に行うことができます。この申立があると,裁判所の「書記官」は,第三債務者に対して,「差押命令正本」と一緒に「陳述催告書」を送達します。陳述催告は,万一その債権が第三債務者に存在しない場合に,債権者が改めて他の財産を差し押さえる必要もあるので,差押がその目的を達したかを確認するために行います。
第三債務者は裁判所に「陳述書」を返送し,債権者は裁判所から,その「陳述書」「送達通知書」を受け取ります。ここで,債権者は第三債務者に対して,差押に必要な書類を提出したうえで,債務者の口座からお金を引き出すことになります。ここで全額回収できれば,債権者は裁判所に対して「取立届」を提出しますが,一部しか回収できなかった場合には,「取立届」「取下書」および「債務名義還付申請書」を提出することになります。空振りだったから,他の金融機関を第三債務者として,新しく債権差押命令の申立をするためです。

いかがでしたでしょうか。今回はざっと民事事件でよく使われる言葉を紹介させていただきましたが,刑事事件や調停事件でも,特有の言葉が使われていますので,是非皆さんも情報収集して,たくさんの言葉に慣れていって頂けますと幸いです。

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